DUNE デューン 砂の惑星【千文字レビュー】

 

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フランク・ハーバート著『DUNE 砂の惑星』。

ハリウッド長年の悲願であり、特大級な曰くつきの事故物件である。

やるからにはハリウッド最大規模級の予算が要るこの一大叙事詩。そこへ、そろそろデヴィッド・リーン症候群を発症し始めているドゥニ・ヴィルヌーヴが参加したことで遂に念願の再映画化が実現した。

 

ヴィルヌーヴが熟達した映画の作り手であることに異論はないし、これまでの仕事から真面目で律儀に題材へと取り組む人だということも知っている。
その予想通り、今回の映画化は全然悪くはない! 

 

キャスティングは原作遵守な上で現状考え得る最高のメンバーを取り揃えている。

ポールにティモシー・シャラメジェシカにレベッカ・ファーガソンなど「それ以外考えられない!」配役に加え、完全カッコいい枠のダンカン・アイダホにジェイソン・モモアを当てる気概、教母役にシャーロット・ランプリングという配役まで全方位的に完璧。

そしてもちろんIMAX撮影された圧倒的な映像の数々が、有無も言わさずアラキス地へと没入させてくれる。この暴力的なまでの映像圧は、DUNEという叙事詩にぴったりだ。

 

そんな調子で失敗作ではない。ただし期待に沿う作品だったかは別である。

リンチ版と同じ轍は踏まぬと、三部作構成を取った判断は正しい(だがそれでも尚ダイジェスト感が付き纏うのは考えものだが…)その一方でビジュアル面の面白味は半減、どころか消滅したと言っても過言ではない。完全にSF的創造力は死活してしまっており、迫力は凄いが薄味な映像が続く。例によってヴィルヌーヴ印の色彩抑えめでグレーな画面ルックを採用しているのもどうだろう。この低体温な画面のせいで、水一滴も命取りという過酷な環境への実感は損なわれる。「砂の惑星」って映画でそれは致命傷だろうよ。

 

また、原作が「映画化不可能」と言われた真の理由に直面したように思える。なにもDUNEは長大なだけで映画化が難しかったわけではない。実際は、ポールの予知夢と現実が絶え間なく入り乱れる構造こそが最大の問題点だったはずだ。その点に関しては絶対に何らかの工夫が必要だった。

だがヴィルヌーヴは元来それをさらにこねくり回しがちな作家でもある。そのせいで幻視シーンは原作既読の身からしても輪をかけて抽象的になりすぎだ。
その感覚をもってヴィルヌーヴらしいとも言えようが、今回ばかりは「難解」ではなく「混乱」しか生じていない。