ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結【千文字レビュー】

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かれこれ5年ほど前。Queenの『Bohemian Rhapsody』に乗せて、一目で一発K.O.なハーレイ・クインが暴れ回る。そんな予告を見て、楽しみに『スーサイド・スクワッド』待っていた。そう、あの惨劇からもう5年…。

 

色んな紆余曲折を経て、スーサイド・スクワッド2は現行で最も適任な映画監督ジェームズ・ガンの元へと渡ってきた。そもそも『スーサイド・スクワッド』自体、DCがマーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に張り合うために作った作品でもあるわけで、その仮想敵本人がそれを作るという歪つな状況ではある。

 

だが、そんな大人の事情はどうだっていい!

トロマが産んだ天才ジェームズ・ガンによる新生スーサイド・スクワッドはチャーミングで、悪辣で、笑って泣けて、血飛沫もいっぱい怪獣もありの大サービス!

そしてなにより5年前に期待していた「こんなんだったらいいな」に180%応え、それでもお釣りが山ほどくる。ジェームズ・ガン作品の中でも会心の一本だと断言してしまおう!

 

初っ端からギャグとアクションと執念すら感じさせる千姿万態な人体破壊の応酬で、最後まで一切ダレることはない。特にマーベルでは封じられていた暴力衝動が破裂して、人をどれだけオモろく殺せるかに身を賭している。

一方で、物語は舞台を一つの独裁島国に、遂行するミッションも一つに絞ったタイトな作り。その余白をアドリブ満載なキャラ描写と関係性の変化に充てることでスクワッドの面々をチャーミングで愛すべき奴らに感じてくる。

 

だが、この映画ふざけてばかりでもない。

ガンが、ディズニーと揉めDCに一時移籍する発端になった過去の小児性愛にまつわる失言。彼はこの映画を通して、そこにもしっかりケジメをつけようとしている。

作中では何度も何度も「子供たちのため」「子供たちを守る」という台詞が繰り返され、ハーレイたちは子供を傷つける敵を絶対に許さない。そして悪党たちが「ヒーローになる」最も重要なシーンも、物語としての必然性ではなく、「子供たちを守る」という誰しもがそうあるべき動機によってキャラクターたちを動かす。そこには死んだ仲間の遺言も、悲しい過去もない。「子供を守る」ことに理由なんていらないのだ。

 

ジェームズ・ガンは自身の過ちを「作品」という形で社会に還元した。これだけで過去が清算されるわけではないだろうが、クリエイターとして真摯な態度だったと思う。