千文字レビュー
アダム・マッケイという作り手が大好きだ。彼の作品は知的で、悪辣で、義憤に燃えていながらもバカバカしい。年の瀬にそんなマッケイの新作がNetflixで配信された。 リーマン・ショックの内幕を描いた『マネーショート』、元アメリカ副大統領ディック・チェ…
母ブタ グンダと、その子供たち。この作品は牧場で暮らす彼女たち親子の生活を、一切のナレーションもなし、モノクロームの映像だけで紡いでいく。 映像と音だけに全てを託すストイックさがありながら、振り返れば全てが緻密に計算されていたのだということ…
※多少のネタバレを含むので鑑賞後を推奨します。 そもそも「18年も月日が過ぎた今、マトリックスの続きを作る必要があるのか?」という疑問があった。その答えは「NO」だ。わざわざ大金かけてまで作る必要はなかっただろう。 だが、この『レザリクションズ』…
Disney+が日本でも本格展開を始めて好調子なディズニー。しかし劇場公開・配信限定のいずれにしても、オリジナル作品の影が薄くなってきているのだけが心配だ。 『ミラベルと魔法だらけの家』だって特に質が悪いというわけでもないのだがイマイチ話題になっ…
フランク・ハーバート著『DUNE 砂の惑星』。 ハリウッド長年の悲願であり、特大級な曰くつきの事故物件である。 やるからにはハリウッド最大規模級の予算が要るこの一大叙事詩。そこへ、そろそろデヴィッド・リーン症候群を発症し始めているドゥニ・ヴィルヌ…
ダニエル・クレイグほど、ジェームズ・ボンドという男に苦しめられてきた俳優はいないだろう。同時に彼ほどボンドと向き合い続けた男もいない。 クレイグ=ボンドは初めから批判の的だった。『カジノ・ロワイヤル』で6代目ボンドに就任した際も「ブロンドの…
『フリー・ガイ』、これが意外と今年のダーク・ホースかもしれない。 ゲームの世界が舞台でライアン・レイノルズがそのNPC(モブキャラ)を演じる。企画を聞いただけで、ある程度おもしろいんだろうとは予想がつく。でも、ありがちな話だし、ヒットはあって…
「もうワイスピとトム・クルーズは、あと宇宙に行くくらいしかやること残ってないよなー」 そんな与太話が現実と化した、悪魔的な一本と言えるだろう。 ワイスピ シリーズはいつだってバカ・カーアクションの自己ベストを更新し続けてきた。すでに前作の時点…
かれこれ5年ほど前。Queenの『Bohemian Rhapsody』に乗せて、一目で一発K.O.なハーレイ・クインが暴れ回る。そんな予告を見て、楽しみに『スーサイド・スクワッド』待っていた。そう、あの惨劇からもう5年…。 色んな紆余曲折を経て、スーサイド・スクワッド…
ケリー・ライカートの映画の登場人物は、いつだって「ジリ貧」だ。 その特徴は自主制作した長編デビュー作『リバー・オブ・グラス』の時点からすでに見てとれる。 結婚して子供も三人いる専業主婦のコージーは、退屈な現実からの「映画みたいな」逃避行を心…
Netfixが送る、三週連続配信されたホラー三部作『フィアー・ストリート』 2作目に当たる『1978』は前作から16年遡り、「ナイトウィング」というキャンプ場で起きた大量殺人事件が描かれる。前作は90年代らしい節操のないホラー映画だったが、今回は舞台が70…
サイバースペース上の仮想現実、ジブリ系譜のファンタジー、日本の牧歌的田舎風景を混ぜ合わせる。これまでの細田守作品で描かれてきた要素を全て詰め合わせた集大成、あるいは幕の内弁当。それが『竜とそばかすの姫』だ。実験的内容だった『未来のミライ』…
Netflixがまた『フィアー・ストリート』という変わった企画を打ってきた。同じ土地・違う時代に起こった3つの怪事件を、3週に渡って配信するという、ドラマシリーズと映画作品の中間に位置するような企画だ。 その1作目となるのが、この『1994』。この後『1…
かつて「(未来を)約束された女性=プロミシング・ヤング・ウーマン」だったカッサンドラは夜な夜なディスコで男たちへ復讐をする。そんなクソったれな男たちに一矢報い、アソコがヒュンッとなる想いをさせるリベンジ・ムービーだ。女性はスカッと痛快に、…
木漏れ日の中、木の棒を投げながら歩く女性と、それを走ってとりに行く犬。緩やかなドリー・ショットで切り取られたその光景は、幸せに満ちている。 ケリー・ライカート監督の『ウェンディ&ルーシー』はそう始まる。 ミシェル・ウィリアムズ演じる女性がウェ…